クループ(Croup / Laryngotracheitis)

⚠️ 医療者向け研究レビュー。診療判断・医学的助言ではない。最終判断は一次資料と専門家の評価による。 最終更新: 2026-06-03 / 反映論文: 8件 / COVID関連クループは全文精読、標準クループ治療値は一部暫定 / 未レビュー

サマリ(現時点の到達点)

クループ(狭窄性喉頭気管炎)は生後6か月〜3歳に好発するウイルス性の上気道(声門下)狭窄で、犬吠様咳嗽・吸気性喘鳴・嗄声を呈し、夜間に増悪しやすい。喉頭気管炎・喉頭気管気管支炎(LTB)・喉頭気管気管支肺炎のスペクトラムを含み、従来の最多原因はパラインフルエンザウイルス(ほかライノ・RSV等)である。診断は主に臨床的で、まず喉頭蓋炎・気道異物などの致死的病態を除外する。重症度はWestleyスコアで層別し、軽症は経口デキサメタゾン単独、中等症〜重症はこれに吸入ラセミアドレナリンを加える(confidence:medium)。 新たな原因として SARS-CoV-2(特にOmicron変異株) があり、Omicron流行期にSARS-CoV-2陽性児のクループ有病が約5.8倍に増え、従来は稀とされた 6歳以上の年長児にも波及 した。COVID-19関連クループは大半が軽症・帰宅可能だが、pre-pandemicより入院率が高く、治療抵抗例は基礎疾患を持つ児に集中する傾向がある(confidence:medium)。

カバレッジ(この知識の確からしさ範囲)

  • 背骨(anchor): — 標準的クループ総説(StatPearls "Croup", 2025, narrative-review)。スペクトラム定義・臨床診断・致死的鑑別の除外・標準治療(ステロイド/アドレナリン)の枠組みを与える中核背骨。
  • 補強: — LTBのスペクトラム内位置づけ(下気道進展による重症化・臨床鑑別困難)を補う総説。
  • 差分(COVID関連クループ・全文精読): (Omicron期の年長児波及・有病5.8倍・横断研究, full-text)/(Omicron期81例の症例集積・Westleyスコア層別・治療抵抗例, full-text)/(3歳児のCOVID-19クループ症例・アドレナリン3回, full-text)。
  • 差分(実践ギャップ・abstract-only): (伊小児科医649名調査・重症度別治療の遵守率・provisional-abstract)。
  • 差分(旧反映): — COVID-19クループ+MIS-Cの稀な症例(最新トピックに限定反映, 暫定)。
  • 旧背骨の降格: (人智学的補完療法のコンセンサスGL)は対象が偽性クループの補完療法に限定されるため、標準的クループ診療の背骨から外し補完療法の参考にとどめる。
  • 暫定(全文未取得): 標準クループ総説2本は provisional-abstract。標準クループのデキサメタゾン推奨用量・アドレナリン吸入後の観察時間・入院基準の確定値は標準診療のSR/GL全文未取得。
  • 飽和目標: 標準的クループ診療のSR/メタ・診療ガイドライン(重症度評価、デキサメタゾン用量・経路、軽症の単回ステロイド、アドレナリン吸入後の観察時間、入院基準)の取得と全文精読。

病態・基礎

  • クループは喉頭・気管(さらに気管支)の炎症性狭窄で、声門下浮腫により気道径が狭まる。喉頭気管炎・LTB・喉頭気管気管支肺炎のスペクトラムを含む。生後6か月〜3歳に好発し、6歳以上は気道径が大きいため従来は稀。好発は秋〜初冬だが通年起こりうる
  • 従来の最多原因はパラインフルエンザウイルス(ほかライノ・RSV)だが、細菌性もありうるSARS-CoV-2、特にOmicron変異株は上気道指向性が強く、新たな主要原因として加わった
  • LTBは下気道に及ぶぶん喉頭気管炎より重症化しうるが、両者の臨床的鑑別は難しい。「クループ」は両者を包括する語として用いられる

臨床像・重症度評価

  • 犬吠様咳嗽(barking cough)・吸気性喘鳴(stridor)・嗄声・発熱。Omicron関連では二相性喘鳴を呈する例もある
  • 重症度は Westleyクループスコア で層別する。COVID-19クループ81例での運用例では、軽症=Westley ≤2、中等症=3〜7、重症=≥8(安静時喘鳴・呼吸仕事量増加が中等症以上の目安)(confidence:medium)。

診断

  • 診断は主に臨床的(犬吠様咳嗽・吸気性喘鳴・嗄声・発熱)
  • まず喉頭蓋炎・気道異物などの致死的病態を除外することが重要
  • COVID-19関連クループでは年齢にかかわらず鑑別に加え、SARS-CoV-2のPCR検査を考慮する。喘鳴を呈する児では年齢を理由に除外しない
  • 共感染の包括ウイルス検査の severity 評価への寄与は限定的との指摘がある(COVID-19クループでは共感染が少なく、入院・重症化との関連は乏しい)

治療

  • 軽症(安静時喘鳴なし): 経口デキサメタゾン単独で多くが軽快する(confidence:medium)。
  • 中等症〜重症(安静時喘鳴・呼吸仕事量増加): 経口デキサメタゾンに加え、1回以上の吸入ラセミアドレナリンを必要に応じ投与する。デキサメタゾン用量はCOVID-19クループ症例で 0.15mg/kg、ラセミアドレナリンは2.25% 0.5mLの報告がある(confidence:low〜medium・症例ベース)。
  • COVID-19クループでは年長児ほどアドレナリン投与割合が高く(6〜<12歳で73%)、治療抵抗例ではアドレナリン反復投与・プロロングドステロイド・酸素・(重症例で)レムデシビルを要した報告がある。施設によっては「ED内で2回のアドレナリン投与」を入院・経過観察の基準とする(confidence:medium)。
  • 実践ギャップ: 伊小児科医649名調査では重症度別の推奨治療(軽症=経口ステロイド単独、中等症=経口ステロイド±吸入アドレナリン、重症=吸入アドレナリン+経口/吸入ステロイド)の遵守率が低く(軽症7.1%・中等症28.0%・重症40.9%)、軽症・中等症での吸入ステロイドの推奨外使用が広く、Westleyスコアの知識が正しい管理と関連した(confidence:low・自己申告調査・abstract-only)。
  • 標準クループのデキサメタゾン推奨用量・投与経路・アドレナリン吸入後の観察時間・入院/帰宅基準の確定値は標準診療のSR/GL全文未取得。
  • (参考・本筋外)補完療法領域では、人智学的レメディ等の推奨がDelphiコンセンサスで策定されたが、臨床アウトカムの効果量は示されておらず有効性は未確立(confidence:low・範囲限定)。

予後・経過

  • 多くは軽症・自然軽快で後遺症なく回復する。COVID-19クループでもED帰宅が約7割、入院約2割、ICU約3〜4%、死亡は報告されていない
  • pre-pandemicと比べCOVID-19関連クループは入院率が高め(症例集積で23.5%)だが、再受診率は低く(7日以内の喘鳴再発は少数)、入院後の追加介入率も低い
  • 治療抵抗・再受診例は3歳未満や基礎疾患(極低出生体重・声門下狭窄・筋強直性ジストロフィー等)を持つ児に集中する。声門下狭窄を持つ児ではCOVID-19クループ後に狭窄が悪化し外科介入を要した例がある(confidence:low・単一例)。
  • ときに重大な上気道狭窄・呼吸窮迫を来し、まれに乳児で致死的となりうる

最新トピック / 未解決の論点

  • Omicron関連クループ: SARS-CoV-2陽性児のクループ有病がOmicron期で約5.8倍に増え、6歳以上の年長児にも非典型的に波及した。喘鳴を呈する小児では年齢にかかわらずCOVID-19を鑑別に加えるべき
  • COVID-19関連クループは大半が標準治療に反応するが、治療抵抗例の予測因子・最適管理は未確立。基礎疾患を持つ児のリスク層別が課題
  • SARS-CoV-2クループがMIS-Cの先行徴候となりうるとの症例報告があり、経過観察が要るとの指摘がある(単一症例・一般化不可)
  • 重症度スコア・標準クループのデキサメタゾン用量・アドレナリン吸入後の観察時間・入院基準の確定値はSR/GL全文での裏付けが次回の課題。

関連トピック

  • 声門下狭窄 — 声門下狭窄。固定性の気道狭窄として鑑別・続発に関連
  • 気道異物 — 気道異物。急性喘鳴・上気道狭窄の鑑別
  • 小児急性中耳炎 — 小児急性中耳炎。小児上気道感染症として関連

更新履歴

  • 2026-06-03: COVID-19/Omicron関連クループ4本を差分反映(paper_count 4→8)。うち3本は全文精読: Omicron期の有病5.8倍・年長児波及、81例症例集積のWestleyスコア層別・治療抵抗例、3歳児症例のデキサメタゾン0.15mg/kg+アドレナリン3回。伊小児科医649名調査の治療遵守ギャップをabstract-onlyで反映。臨床像・重症度評価・診断・治療・予後の各節を具体値で充実。
  • 2026-06-02: 標準的クループ総説2本を差分反映、背骨を標準治療へ差替 。旧背骨(人智学的補完療法GL)は補完療法限定として降格。COVID-19クループ+MIS-Cの症例を最新トピックに反映
  • 2026-06-01: 初版作成(abstract-only 暫定)。人智学的補完療法のコンセンサスGLを範囲限定の暫定背骨として反映 。標準的クループ診療の中核SR/GL取得を次回優先。

参照論文

  1. — 背骨: クループの標準的総説(スペクトラム定義・臨床診断・致死的鑑別の除外・ステロイド/アドレナリン) (Kadam 2025, StatPearls / narrative-review / Lv.5 / RoB:n/a / confidence:medium / 暫定)
  2. — 補強: LTBのスペクトラム内位置づけ(下気道進展による重症化・臨床鑑別困難) (Ernest 2023, StatPearls / narrative-review / Lv.5 / RoB:n/a / confidence:medium / 暫定)
  3. — 差分: SARS-CoV-2クループ+MIS-Cの稀な小児例(先行徴候としての注意喚起) (Lim 2021, BMJ Case Rep / case-report / Lv.5 / confidence:low / 暫定)
  4. — 参考(範囲限定・降格): 偽性クループへの人智学的補完療法のDelphiコンセンサス (Schwermer 2024, Complement Ther Med / guideline / Lv.5 / RoB:n/a / confidence:low / 暫定)
  5. — 差分: Omicron期のCOVID-19関連クループ(有病5.8倍・年長児波及)の多施設横断研究 (Narayanan 2023, J Emerg Med / case-series / Lv.4 / RoB:high / confidence:medium / full-text)
  6. — 差分: Omicron期COVID-19クループ81例の症例集積(Westleyスコア層別・治療抵抗例) (Hayes 2023, JEM Rep / case-series / Lv.4 / RoB:high / confidence:medium / full-text)
  7. — 差分: 3歳児のCOVID-19関連クループ症例(アドレナリン3回・デキサメタゾン0.15mg/kg) (Ali 2024, Cureus / case-report / Lv.5 / RoB:high / confidence:low / full-text)
  8. — 差分: 伊小児科医649名のクループ治療実践調査(ガイドライン遵守ギャップ) (Pierantoni 2024, Respir Med / cohort(survey) / Lv.4 / RoB:high / confidence:low / 暫定)
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